昨日は森美術館で始まったアイウェイウェイ展のオープニングに足を運びました。彼自身も初となる大規模個展だそうですが、展覧会は正直彼の作品を欧米の美術の文脈に則ってきれいに並べただけのショーケース的な展覧会の構成になっていて、作家らしさがほとんど伝えられておらず、いい印象を持ちませんでした。これでは、彼のより前衛的で危険な活動について、現在北京で彼が開発している草場地の様子など、よりリアルな彼の姿が展覧会を見るだけではまったく伝わりません。
いろいろと考えてみたのですが、もしかしてこの展覧会、作家が美術館の能力を試していたのでは、とも思えます。自分の要求に対し美術館はどう答え、準備するか、そして、どういう空間を構成するか、展覧的には美術館として優等生的な答えを出したのかもしれませんが、作家本人は正直どう思っているか、今までかなり挑戦的で概念的で危険な展覧会を続けてきただけに、作家の本音を知りたいところです。そして、私なりに思うのは、圧倒的にコミュニケーションにかける時間が足りなかったのではないか、ということです。特に中国ではこういったお互いのやり取り、つまりコミュニケーションを重視し、やり取りを重ねれば重ねるほど、作品や展覧会は深みを増し、面白くなっていくと思うのですが、今回はあまりに表面的な構成になっているので、作家らしさはまったく伝わらず、作家と美術館とのやり取りの気薄さが展覧会を通じて感じられてしまいました。
展覧会を準備する、というものはとても難しいことであり、特にアイウェイウェイのようなコンセプチュアルな作家の展覧会を企画するのはそれなりにしっかりと作家に向き合って準備しなければいけない、ということを改めて感じることができました。
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