「北京オリンピックが開催される2008年、もう一つの大国はどうなっているか。」をテーマにアメリカまでやってきました。今回のチケットがNYから一都市往復のチケットがついていたため、先ずはまだ足を踏み入れたことのないアメリカの首都ワシントンに行くことに。 それぞれの大国の首都はどんな感じか比較もこめてきてしまいました。
ワシントンはとにかく大きい。スケール的には北京にも似ているところがあります。やはり多くの人間をいろいろな意味で管理するにはこの「大きさ」は非常に有用なのでしょう。ワンブロックからワンブロック歩くのにも時間がかかるし、建物の配置が全て計画的で権威的に映ります。そしてワシントンは実は見所盛りだくさん。3日間弱いましたがそれでも全然全て見切れない規模でした。その中で絞りに絞って、アート関係では、スミソニアン、ナショナルギャラリー、フィリップスコレクション、ホロコーストミュージアムなどを見て回りました(それとは別にワシントン記念塔や国会議事堂などミーハーな観光スポットにも行きましたが)。
スミソニアンは多くの博物館や美術館の総称で、毎年600万人の訪問客を受け入れる航空宇宙博物館、上野の国立科学博物館のような自然史博物館、東洋美術のコレクションが豊富なフリーアギャラリーやサックラーギャラリー、現代美術に強いハーシュホーン美術館などなどが含まれます。今回ハーシュホーンでは映像の現代美術「The Cinema Effect Realisms」が開催されていて、ルナ・イスラムやピエール・ユイグ、ポール・チャンなどの作品をワシントンでまとめて見ることが出来ました。個人的にはジュリアン・ロースフェルドのインドで現実と非現実を行きかう映像と、超スキャンダラスなフランセスコ・ヴェゾーリの作品が気になりました。サックラーではXuBingの作品Monkeyが常設されていて、そちらも見逃さずにしっかり見てきました。空間にしっくり作品が収まっているのでお見逃しなく。
ナショナルギャラリーも名作揃い。ダ・ビンチから始まり、ボッティチェリ、レンブラント、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャンなどなど教科書に出てくるような作品群が目の前でまとめてみることが出来ました。これらが全て寄付で所蔵されているのだからアメリカは凄いですよね。近代・現代美術を扱う東館でも、ピカソ、カンデンスキー、モンドリアン、ジャコメッティ、デビッド・スミス、ウォーホール、リキテンシュタインなどなどとにかく盛りだくさん。日本人作家では草間弥生と河原温が展示されていて(アジア人作家は唯一この二人)、嬉しくなりました。何故かこの東館でアフガニスタンの国宝展が開催されていましたが、政治的な香りがします。
フィリップスコレクションは名画と空間とのバランスに脱帽。あの絶妙さを見ると、かえってホワイトキューブでの作品の鑑賞がつまらないと感じるくらいです。昨年のヴェニスビエンナーレで見たアルテンポの展示もとても圧巻でしたが、そういったホワイトキューブではない展示、面白いです。
ホロコースト博物館は非常に考えさせられることが多い展示。数多くの資料を突きつけられることで改めてその悲惨さを痛感しました。そして地下では「ナチ・オリンピック」展が開催されていて、ユダヤ人アスリートが弾圧された経緯や、表現がコントロールされ政治的表現手段として利用されたオリンピックへの批判など、(直接そういった記載はないですが)今年北京で開催されるオリンピックを多少意識させるような、こちらも政治的な香りが漂っていました。
この規模で名作が収蔵され、展覧会が企画されることは、ある意味、国の正当性を維持し、首都の防衛する戦略がきちんと機能していると言えるでしょう。つまり、これだけの名作が揃っていれば、街を攻撃することはまずないといって良く、名作がたくさんあることはもちろん街の教養力を高めるためでもあるでしょうが、それ以上に首都を守る戦略としても十分機能するのです。日本ももう少し戦略的にアートを捉えてもよいと思います。
最後に余談になりますが、今回泊まったホテルはデュポンサークルにあるギャラリーインというドミトリースタイルのところでしたが、値段もリーズナブルで、こぎれいで、一人旅で特に個室が必要ないという人にはお勧めです。寝心地もよかったです。そして逆に切れたのがコンチネンタル航空。往復とも2-3時間以上遅れ、出発は空港混雑のため滑走路で1時間半待ち、到着もゲートが空かず滑走路で1時間待たされました。グランドサービスも本当に適当。本当にひどい。中国よりひどい。アメリカ人は中国の人を馬鹿にすることがよくありますが、こういったサービスのでももうアメリカは中国に抜かれてしまったと感じました。中国の方がサービスを努力する姿勢がまだあるし、真剣に話せば真剣に答えてくれる。アメリカの人は本当にいい加減で横柄な対応で、改善努力も感じない。アメリカは本当の意味でアジアに抜かれしてまう日も近いんじゃないか、とこういった些細なところでも感じました。
3 件のコメント:
ちょうど友人のブログで、余談のところと同じような記載がありました。
「シャトル便ということで、NYからDCへは一つの航空会社だけでも毎時間飛んでいる。
しかし、乗車率はなんとおよそ3割。そのくせ離陸待ちの飛行機で滑走路は渋滞、離陸は一時間程遅れる。
アメリカの国内便は、遅れるのは普通、荷物がなくなるのも日常茶飯事ヘッドホン借りるのすら金取ったりして、評判は最悪。原油高の煽りで運賃も高騰。」
金島さんの記事とこの記事を見たときに、もしかすると日本人のサービス感覚が、世界で通用するのかもしれないと確信しました。
中国、アメリカと見て歩く金島さんの行動力、非常に励みになります。応援しています。
松田龍太郎
>松田さん
書き込みありがとうございます。本当にアメリカの国内線はいけておりませんでした。松田さんのおっしゃるとおり、これから日本人が海外で出来ること、アメリカ、そして中国でもたくさんあると思っています。
日本の教育が偏った一義的なものでなく、社会は多様性によって構成されていて、国際化の中でより多くの多様性に触れ、日本は、そして自分はその中でどう生きていくいくべきかを考える、といった考え方に根ざしたものになるべきですよね。今の日本は全体的に社会が閉鎖的でドメスティックになっていることに正直非常に不安を覚えます。どうにかしなければ。
今後ともよろしくお願いします。
コメントを投稿